三日坊主

むかしむかし、あるお寺に坊主がいました。寺で生まれ育った彼はどんな事でも3日で飽きてしまうほどの飽き性で、彼を見かねて堪え性をつけさせようとした和尚さんもついには折れて寺の手伝いも3日ごとに新しいことをさせるほどでした。

 

そんなある日、和尚さんが用事で遠くに出かけることになりました。坊主のことを心配した和尚さんは「3日で戻るから必ず私の帰りを待っていること」と厳しく言いつけ、寺を出ていきました。しかし、3日後はとんでもない荒天で、和尚さんはついに帰ることができませんでした。

 

和尚さんが寺に帰ってきたのはその2日後、寺を出てから5日が経っていました。心配しながら帰ってきた和尚さんでしたが、坊主はどこにもいません。和尚さんは寺を飛び出し町を探しましたが、坊主は見つかりませんでした。たいへん落ち込んだ様子の和尚さんでしたが、そのまま思い悩み続けるわけにもいかず、寺に戻って仕事を続けるのでした。

 

1ヶ月ほどたった頃でしょうか、寺に手紙が届きました。手紙はなんと坊主からでした。

 

手紙には坊主が寺から消えてから体験したことと、「和尚さま、心配をかけて申し訳ありません。わたしの悪い癖でして、3日も経ってしまえば和尚さまを待つのに飽きてしまって隣の町へと飛び出していってしまいました。それにしても町はすごいですね。このわたしでも色んなものがあって1ヶ月はここにいられるほどです。これ以上となると書くことが多すぎて手紙を書くのに飽きてしまいそうなので今回はこの辺りで」というようなことが書いてありました。

 

和尚さんは呆れるやらほっとするやらで、旅をするのは良いが、飽きない内に手紙をよこすこと、飽きてすることがなくなったら寺に戻ることと書いた手紙を坊主に送りました。しかし、坊主が手紙を送ることはありませんでした。

 

数年後、寺に人が訪ねてきました。和尚さんが門を開くと、そこにいたのは子どもを1人抱っこした坊主でした。坊主が言うにはその子供の名前を和尚さんにつけてほしくて、寺に戻ってきたとのことでした。

 

和尚さんが「あれほどの飽き性のお前がこれほどまでに長く旅をするとは、遠くの街というのはそれほどまでに栄えているのか」と聞くと、坊主は「いや和尚さま、わたし自身も驚いているのですが、遠くの街はそれはそれは栄えておりまして、あまりの変わりようにわたしの飽き性もすっかり治ってしまいました。今では別嬪さんと出会って家庭を作るほどでして」と答えます。

 

和尚さんはすっかり感心してしまって「お前が家庭を作って子供を育てるとは、いやはや時が流れればお前も成長するものだなぁ。」「さて、家で待っている奥さんのためにもいい名前をつけてやらんとな。して、どうして奥さんは来ておらんのだ。名前をつけるなら一緒に来たいと言ってもおかしくはないだろう」と。

 

「和尚さま、いくらわたしの飽き性が治ったとはいえ、」

坊主は答えます。

 

「美人は3日で飽きるんですよ」